2009年10月26日

学校の大きさ

学校の大きさ


Bordeaux, mars 2009

 たとえば,学校規模の問題にしても「小さな共同体」を学校の基本形として設定すれば,いまのような乱暴な統廃合計画は推進されないないはずである。欧米諸国と比べて,わが国の小・中学校は学校規模が大きすぎ,より「小さな共同体」へと再編することが,基本課題であったことを想起すべきであろう。
 たとえば,イギリスの小学校は,最大規模でも二百五十人をこえないことが原則とされている。その理由をイギリスの指導主事に質問したことがあるが,この人数をこえると校長が一人ひとりの生徒の成長に責任を負えないからであり,十数名をこえると教師が相互に連帯して仕事を推進することが不可能だからである,という回答であった。
 私自身,これまで日本国内の一千校以上の学校を訪問し調査してきたが,一人ひとりにゆきとどいた質の高い教育や,教師と子どもが個性を発揮する生き生きとした授業と学びは,ほとんどの場合,小規模の学校で実現していた。
 学校を小規模校化する必要は,児童・生徒の問題行動に関する文部省の統計にも顕著に示されている。公立中学校の校内暴力の生徒一人あたりの発生件数を比較すると,六学級以下の中学校では,対教師暴力で0.6 パーセント,対生徒暴力で0.7パーセントであるのに対して,三十一学級以上の中学校では,対教師暴力で10.6パーセント,対生徒暴力で7.4パーセントというように,十倍以上に激増している(一九九三年文部省調査)。いじめや暴力やそれへの対応として強化される管理主義教育など,今日の学校の病理の多くが,学校規模を縮小するだけで解決に近づける問題なのである。

佐藤学『学びの身体技法』


タグ :佐藤学


Posted by Nomade at 20:13│Comments(2)
この記事へのコメント
初めまして, こんばんは。
ぐらと申します。

佐藤学さんのこの文章は正直「その通り」と言わずにはいられません。

校長が1人1人の生徒を把握するのは管理職の責任でもありますし, またコミュニケーションを教師-生徒が図っていくには教師対生徒の数に限界があると思っています。

教育に予算を割く事は, 将来の国作りまた人作りの上でも基盤を成すとても大切なものだと私は思っております。
(学校教育のみならず)

でも今予算削減を一生懸命されている政府は
斬新なチャレンジとも言えるのかもしれないのですが, 教育関係で予算が大幅に削減・廃止を提言されている事は, 短期的な見方しかできていないのではないかと私は悲観視しております。

もっともっと
子ども達に潤いのある教育をと望むのは贅沢なのでしょうか・・・。
Posted by ぐら at 2009年11月20日 21:52
- ぐら殿
はじめまして。
難しい問題ですね... まあ,国の繁栄にも<流れ>のようなものがあって,まあ今の日本はなにをやっても駄目なんでしょうね...
ただ... 子どもが成長する場所は<学校>だけではありませんから...
希望だけは持ちたい続けたいものです。
今後ともご贔屓に!ご訪問ありがとうございました。
Posted by NomadeNomade at 2009年11月21日 10:48
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    コメント(2)