2013年09月04日

フィクションそれともノン・フィクション

フィクションそれともノン・フィクション
Hiroshima, août 2013



 刊行者の言葉 前もって一般読者におことわりしておかなければならないことは,本書の表題がいかにあろうと,また編集者がその序文においていかに説いておろうと,われわれとしてはこの書簡集の真偽のほどは保証しないということ,それどころかわれわれは本書を単に一編の小説にすぎないと考える有力な理由さえ持っている,ということである。
 それにまた,著者は〔……〕みずからの手でその真実らしさを打ちこわしてしまったように思われる。たしかに,著者が登場させる幾人かの人物はまことに身持ちが悪く,いかにしてもわれわれの世紀に,くまなく文明の光を受け,そのため〔……〕男という男はすべて謹直,女という女はすべて貞淑であるこの哲学の世紀に,このような人物が実在したとは,かりにも考えられないのである。
 したがって,もしも本書に語られた事件が真実にもとづくものであれば,それらは他の国または他の時代においてはじめて起こり得るものだ,というのがわれわれの見解である。〔……〕
 〔……〕一つの推論を加えてわれわれの見解の裏打ちとしよう。これこそは反駁の余地のない決定的なものと思われる〔……〕。すなわち〔……〕年金六万フランをもつ娘が修道女になったり,若くかつ美貌の法院長が傷心のあげく死んだりすることは,今日では決して見られないということである。


ラクロ『危険な関係』




Posted by Nomade at 10:58│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
フィクションそれともノン・フィクション
    コメント(0)