2012年03月13日
石棺
Tokyo, avril 2009
こんなにたくさんの石棺があるのに,どれ一つとして同じ大きなのものはない。これくらいの大きさなら自分は入れるだろうか,知らず知らずのうちにそういう目で石棺の長さを測っている。できるなら,あまり窮屈でない方がいい。深さもゆとりがあって,胸の上で両手を組んだ時,肘が側面に当たらないくらいの幅もあった方がいい。けれど大きすぎるのは困る。僕の体を覆うのに見合うだけの暗闇があれば,それで十分だ。もし底に雨水が溜まっていなかったら,自分に一番ふさわしいと思える石棺に,僕は本当に横たわってみたかもしれない。
小川洋子『ブラフマンの埋葬』
Posted by Nomade at 22:23│Comments(0)