2008年09月30日

母音

母音


Bordeaux, mars 2007

「母音」

A(アー)は黒,E(ウー)は白,I(イー)は赤,U(ユー)緑,O(オー)青よ,母音らよ,
何時の日かわれ語らばや,人知れぬ君らが生い立ちを。
Aはそも,痛ましき悪臭にまいつどう銀蝿の
毛羽立てる黒の胸衣よ,暗き入り江よ。

またEは,靄と天幕(テント)の純白よ,
毅然たる氷河のきっ先,白衣の王者,繖花形(オンペル)のかすかな顫(ふる)え。
Iは緋衣(ひごろも),喀(は)かれし血,怒りに或るは
改悛に酔う人の,美しき朱唇(しゅしん)の笑(えま)い。

さてUは周期なり,緑なす海原の,神さびしわななきなり,
獣たちやすろう牧の平和なり,錬金の術を究むる
博士らの額の皺の平和なり。

Oはそも天のラッパよ,甲高く奇しき響きの,
天界と下界をつなぐ沈黙よ,
ーーオメガなり,神の眼の紫の光なり!

アルチュール・ランボー「母音」in『ランボー詩集』/ 堀口大學訳

昨日,金子光晴が「フランスのあかんぼ詩人もどき」と詠っていたご当人の登場です。
しかし堀口は巧い。ただ感嘆...



Posted by Nomade at 14:23│Comments(0)
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