2008年09月25日
不思議な威厳
Bordeaux, avril 2008
昔は誰でも,果肉の中に核があるように,人間はみな死が自分の体の中に宿っているのを知っていた.(いや,ほのかに感じていただけかも知れぬ。)子供には小さな子供の死,大人には大きな大人の死。婦人たちはお腹の中にそれを持っていたし,男たちは隆起した胸の中にそれを入れていた。とにかく「死」をみんなが持っていたのだ。それが彼らに不思議な威厳と静かな誇りを与えていた。
ライナー=マリア・リルケ『マルテの手記』/ 大山定一訳
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