2011年06月30日
今日日の学生
Lyon, mai 2009
学生ほど,今日,無智なものはない。つくづく,いやになってしまう。授業がはじまる迄は,子供のおもちゃの紙飛行機をぶっつけ合ったり,すげえすげえ,とくだらぬことに驚き合ったり,卑猥な身振りをしたり,それでいて,先生が来ると急にこそこそして,どんなつまらぬ講義でも,いかにも神妙に拝聴しているという始末。そうして学校がすめば,さあ今日は銀座に出るぜ!などと生きかえったみたいに得意になって騒ぎたてる。けさも教室でひとしきり,ぎゃあぎゃあ大騒ぎだった。何事かと思ったら,昨晩,Kというクラスの色男が,恋人らしい女と一緒に銀座を歩いていたというのだ。それで,その色男が教室に入ってきたら,たちまち,ぎゃあぎゃあの騒ぎになったのである。あさましいというより他は無い。ひねこびた色気の,はきだめという感じである。みんなに野次られて顔を赤くしながも,それでもまんざらでもなさそうに,にやにやしているKもKだが,それを,やあやあと言って野次っている学生は,いったい,何のつもりなんだろう。わけがわからない。不潔だ!卑劣だ。ばかな騒ぎを見ているうちに,激しい憤怒が湧いて来た。
太宰治「正義と微笑」in『パンドラの匣』
Posted by Nomade at 22:28│Comments(0)