2011年02月03日

二人は次第に加速度をつけ...

二人は次第に加速度をつけ...


Kagoshima, janvier 2009


 岩のベンチに座った坐った大八木の膝の上に,そして千歳は跨がってきた。
「ああ……」
 彼女は切なそうに声を震わせた。
「何だか変。ほんとに……変なの,あたし」
 〔…〕
「ああ」
 痺れるような快感に浸り,そして耐えながら,大八木は声を返した。
「いい?」
 喘ぎつつ,千歳が訊く。 
「……感じる?ね…… 」
「ああ,うん」
 夜空を流れる雲が,月を隠した。
 自分たちを包んだ闇が濃くなったのに気づくこともなく,二人は次第に加速度をつけ,高みに向かって行く。
「あ……あ,あたし,もう……」


綾辻行人『殺人鬼』


タグ :綾辻行人


Posted by Nomade at 22:48│Comments(0)
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