2009年10月02日
方言
Kagoshima, février 2009
たうどう磐城平に着いた。
いままでみなかったガソリンカーが待つてゐる。
四年まではなかつてガソリンカーだ。
小川郷行ガソリンカーに乗り換へる。
知つてゐる顔が一つもない。
だんだん車内は混んでくる。
中学生や女学生たちもはひつてくる。
知つてゐる顔は一つもない。
四年前まではそんなことはなかつたのに驚いたことになつたものだと時間の恐ろしさを考へてると。
「お蚕様(かえこさま)んときなんして来なかつたんだ。」
「んだつて。んげながつたんだもの。待つてだつぺ。」
「おら。てづだつてもらふぺと思つてえよ。」
「そうげえ。こんだからね。」
ああ。
この方言だけは見知り越し。この言葉だけはおれのものだ。
草野心平「故郷の入口」(抜粋)in『草野心平詩集』(『大白道』)
Posted by Nomade at 21:25│Comments(0)