2009年07月17日
彼はわたしの手に胸を置き...
Tokyo, juin 2009
「私たちがこうしている間,温室の外の人たちは,いったい何をしているのかしら」
「でたらめな言葉を並べているだけさ」
「わたしたちの言葉は,でたらめなんかじゃないわよね」
「この温室の中では,誰でも本当のことを口にすることができるんだ」
「そうね。だからわたしは,ここへ来たんだわ」
彼はわたしの手に胸を置き,植物のように静かなキスをした。
小川洋子「誰かが君のドアを叩いている〕(抜粋)in『アンジェリーナ』
Posted by Nomade at 22:07│Comments(0)