2009年06月22日
対岸に住むあなた!
Paris, mars 2008
「七本の川が流れる町」
七本の川が流れる町
洗濯物の乾きが早い
こどもがいつも走っている町
帰ってくる舟と
出ていく舟と
舳先の表情で選びながら
古びてしまった感情は
ばさばさと乾かしてしまおう
対岸に住むあなた!
封書に閉じ込めた川の末尾は
岩水のようなペーパーナイフで
あふれさせて
手紙をよむあなたの
ふせたまつげをつまんで
視線をあわせてみたいとおもう
急流を呼びこんでみたいとおもう
会いたいと思うと橋がかかる
わたす
わたされる
わたっていく
むこう岸をもたない
かかり続ける橋
けれど わたり終えた瞬間に
すいっと橋になってしまう橋
そんな橋がいくつか,かかる
ここは
川のある町
小池昌代「七本の川が流れる町」(『水の町から歩きだして』)in『小池昌代詩集』
Posted by Nomade at 21:41│Comments(0)