2009年05月25日
人生は玩具
Kagoshima, janvier 2009
大埠頭にて
『人生は玩具だ』と海はいふ。秋,槍の穂先のやうにキラキラする水,黒い船影(シルエツト)の港
よ。爽やかな悲よ! 魚樽を投あげ,又,磯臭い島の人達をはこんでゆく,秋色新鮮な小汽船を,蒼
空に煤を吐きながら小さくなつてゆく一の姿を,私は今日も同じ埠頭場の手擦(てすり)からながめ
てゐた。
『人生は玩具だ』と。嘔吐の臭をはこびながら,海はいふ!
金子光晴「大埠頭にて」in 『金子光晴詩集』(『水の流浪』)
Posted by Nomade at 22:36│Comments(0)