2009年04月13日
顳顬(こめかみ)
Bordeaux, mars 2008
「顳顬(こめかみ)」
こめかみの裏側に
折りたたまれて しまわれている地図
不眠の夜
ひろげてもひろげても まだたたまれている部分があって
どうやらそこには
夢の都がしるされているらしいのだが
とほうもなくひろがるのは
痩せた土地や 船影もない荒磯(ありそ)ばかり
花も咲かず 鳥も飛ばず
こんなさびしい風景は
この世のとこにも見あたらない
誰も はいりこめない
誰をも 誘い入れられない
ひとりで歩むほかよりない いくすじかの径(みち)に
時として 稲妻のよう 痛みがはしり
こめかみに青く 透けて見える
新川和江「顳顬(こめかみ)」in『新川和江詩集』
Posted by Nomade at 23:04│Comments(0)