2009年02月17日

子供

子供


Kagoshima, janvier 2009

遠い蒼い空の窪みのように。
お前はおれの中に沈み。
おれは抱きすくめる。
毎日は買ってやれない飴ん棒達をこんなによろこぶのを。お前の頬に頬をこすりつける。

おれは想ひ出す。
前橋の冬。
お前はそこのトタン屋根の薄暗い長屋の六畳に生まれた。
おむつの満艦飾の下で一ダースの貧しいはなたれ天使達が。お前も裸でよちよち歩いていた。
そうして今。おれらは一枚の布団を四人で着。その中の一人が小さいお前でおれの胸に埋まってねるのだ。
やがてそれはお前に話すことが出来る。お前はむしろそれをうれしく思ふだらうことを信じ。
おれはお前をだきすくめる。

(何んたる声をたてたい吸ひこむ空)

さ。べい独楽と遊べ,
ナ。
夜の仕事に。おれは出掛けていかにやあならん。

草野心平「子供に。」in『草野心平詩集』


タグ :草野心平


Posted by Nomade at 15:57│Comments(0)
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