2009年01月06日
敬語
Kagoshima, décembre 2008
「すべての人は基本的に平等である」けれども,社会的には明らかな不平等がある。近年でいえば格差社会・階層社会といった言葉で代表されるような,分裂気味な社会情勢がある。すべての人が基本的に平等であるなら,こうした状態はあきらかに不平等なのであるが,それをこの指針〔二〇〇七年二月二日文化審議会が議決答申した「敬語の指針」〕の文言では「多様化し複雑化した人間関係」と表現する。格差が拡大する社会を多様化・複雑化としてとらえ,そのなかで「相互尊重」のための円滑なコミュニケーションには敬語が不可欠だという立場である。
敬語をつかいこなすことが人間関係の平等性をしめすのだ,と主張するのであれば,社会的な不平等はそこで隠蔽されるしかない。これはまさに統治技法としての敬語である。
安田敏朗『国語審議会:迷走の60年』
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