制度論:どうして中高生は扱いが難しいのか
Bastide, mars 2007
〔...〕中等教育は,①高等教育への準備教育,②職業生活に直結する実学的教育,③完成市民教育という三重の役割を担うことになった。この三重の課題をどのように調整し,効果的に実現するかという課題は,学校教育が拡大した現代産業社会において中等教育に課されている 〔...〕難しい課題である。
〔...〕しかし,中等教育の課題の難しさは,これにとどまらない。中等教育は,主として第一の役割,すなわち進学準備教育という役割を中核にして,学校教育システムの選抜・振り分けという機能を集中的に担っている。しかも,この機能は,中等教育が拡大し,進学準備教育,実学的教育,完成市民教育という三つの役割をになうシステムとして発展するにつれて重大で難しいものとなる。どの時点で,何を基準にして,どのような方法で,選抜・振り分けを行うのかということが重要な社会的な関心事となるからである。しかも,この社会的関心は,機会の平等や選抜の公平性にかかわる関心と,選抜の妥当性・適切性にかかわる関心と,わが子や教えが実際にどうなるかという個別的関心との間で引き裂かれている。さらに,三つのタイプの教育の間の格差や序列,学校間の格差や序列が重要なものとして意識されればされるほど,その選抜・振り分けに対する関心が強まり,その選抜・振り分けを生き抜くための競争,受験競争が激化することとなる。(pp.94-95)
藤田英典『教育改革:共生時代の学校づくり』東京:岩波書店,1997年,256 pp.