淵源の愛

Nomade

2009年01月07日 15:07




Kagoshima, juin 2008

欣求も,嘆も,氾濫も,静止も
ただ,無終無始の長い放浪である。
生命とはかかる中性な水の感情,
……憂鬱な波紋の上の波紋である。

あはれあれ,松樹林彷徨ふ冬の陽の淋しいランプ。
灰色の岩礁に,感情はすべて死にはてた。
そのとき,私は孤(ひとり),松籟により,
愛執と別離の淵源の愛をきく。

金子光晴「水の放浪」in『金子光晴詩集』